⚰️アヌビス Anubis|エジプト神話|女神転生

エジプト神話

⚰️アヌビス Anubis

 -冥界の門に立つ黒き神――死者を守り、魂を永遠へ導く者-

 アヌビスは、古代エジプトで死者の埋葬とミイラ作りを司った冥界の神です。ジャッカルの神として知られており、黒い犬科動物、またはその頭を持つ人間の姿で表され、墓地の守護者として畏敬されました。
 死者の魂を審判の場へ導き、心臓の重さを量る儀式にも立ち会います。恐ろしい死神というより、死者が無事に来世へ旅立つための頼もしい案内役です。
『女神転生』でも、独特な姿と多彩な魔法を備えた神獣として印象深い存在となっています。
神獣アヌビスをイメージしたオリジナルイラスト

神獣アヌビス

祠の上に伏すアヌビス像(Anubis Shrine)を描いたエジプト神話切手|エジプト(Egypt)1967年

◆エジプト 1970年 切手の日

描かれているのは、古代エジプトの王家谷にあるツタンカーメン王墓(紀元前1350年頃)から発掘された「アヌビス神の像」です。金箔で飾られた台座の上に、黒いジャッカルの姿をした冥界の神アヌビスが伏せている造形で、王のミイラや墓を守護する役割を果たしていました。黒い色はミイラ作成時の防腐剤や、再生を意味するナイル川の豊富な土壌を象徴しています。

メガテンと神話におけるアヌビス

墓地を守る冥界の神

アヌビスは古代エジプト語で「インプ」または「アンプ」と呼ばれ、ミイラ作りと埋葬、墓地の守護を司る神です。オシリス信仰が広がる以前には、死者の世界を統べる中心的な神でもありました。やがてオシリスが冥界の王となってからも、アヌビスは死者を迎え、正しい道へ導く重要な役割を保ち続けます。死そのものをもたらす神ではなく、死後の旅に寄り添う守護者でした。

オシリスを最初のミイラに

後世の神話では、アヌビスはセトに殺され、遺体を切り刻まれたオシリスの身体を集め、布を巻いて最初のミイラを作ったとされます。この神話によって、アヌビスは防腐処置と葬送儀礼の守護神になりました。ミイラ作りを行う祭司は、儀式の際にアヌビスをかたどった仮面を着けたとも考えられています。遺体を保存することは、魂が来世で再び身体と結びつくために欠かせない神聖な行為でした。

心臓を量る死者の審判

死者の審判の天秤とアヌビス(Anubis)を描いたエジプト神話切手|エジプト(Egypt)2004年

◆エジプト 2004年 行政監察庁設立50周年記念
 この官庁は「公務員の不正等を監視・検察する機関」で、意匠の中心をなすのは、古代エジプトの「死者の審判」です。
 狼頭の神アヌビスは、審判の場で故人の心臓が入った壺(鳥の形の容器)を左皿に載せ、右皿の「真実の羽(マアトの羽)」と釣り合うか計量・操作しています。心臓が悪行で重く傾けば、右脇の魔獣アーマーン(アミメット)に喰らわれ、永遠の存在を奪われます。

 古代エジプトにおいて、アヌビスが天秤を用いて厳正に善悪を裁く儀式は、公平無私な裁きの絶対的な象徴でした。この切手では、そのアヌビスの神話的役割を、公務員の不正を正し行政の公正を守る「行政監察」の理念と重ね合わせています。中央には目隠しをした現代的な正義の女神の像を配置し、古代の神話的裁きと現代国家の法の正義を見事に融合させたデザインとなっています。

死者の審判に立ち会うアヌビス(Anubis)を描いたエジプト神話切手|エジプト(Egypt)2001年
死者の審判に立ち会うアヌビス(Anubis)切手拡大図|エジプト(Egypt)2001年

左下~中央を拡大

◆エジプト 2001年 「切手の日」
『死者の書』において、心臓の計量をしつつ、「魂の浄化と永遠の命への旅」を表現しています。
中央にホルス、その左下で、天秤を操っているのがアヌビス、その横がアーマーンです。

黒い身体に秘められた再生

センネジェムのミイラを手当てするアヌビス(Anubis)を描いたエジプト神話切手|サントメ・プリンシペ(São Tomé and Príncipe)2008年

◆サントメ・プリンシペ 2008年 古代エジプト文化遺産

メディナにあるセンネジェム墓の壁画をもとに、冥界神アヌビスが葬台のミイラに手を添える姿を、彫像のような立体的表現で再構成しています。
左上には太陽神ラーの眼も配され、死者の身体を守り、その魂を再生と来世へ導くアヌビスの役割を表しています

 アヌビスは、耳を立ててうずくまる黒い犬科動物、または犬科の頭を持つ男性として表されます。古代エジプトでは、砂漠の縁や墓地の周辺に現れる野生の犬科動物が、死者の領域を守る神へと姿を変えたと考えられています。
 一般には「ジャッカルの神」と呼ばれますが、かつて北アフリカのキンイロジャッカルとされた動物は、遺伝子研究によってオオカミに近い別種「アフリカンゴールデンウルフ」と再分類されました。そのため、アヌビスのモデルもこの動物だった可能性がありますが、特定の一種ではなく、複数の犬科動物の特徴を取り入れた姿とも考えられています。
 また、その身体の黒色は実際の毛色ではありません。ミイラ化した遺体の変色とともに、ナイル川が運ぶ肥沃な黒土を象徴しています。毎年新たな生命を育む黒土と同じく、アヌビスの黒い姿にも、死を越えて再生し、永遠の生命へ向かうという願いが込められているのです。
 メトロポリタン美術館

切手に描かれた守護者

1967年のエジプト切手には、ツタンカーメン王墓で発見された、祠の上に伏すアヌビス像が描かれています。この像は宝物庫の入口に置かれ、墓を侵す者を威嚇する守護者だったとみられます。2004年にエジプトで発行された行政監察庁50周年記念切手は、古代エジプトの「死者の審判」を現代の司法・行政の公正さに重ねた一枚です。中央には秩序と正義を象徴する天秤が置かれ、その傍らに計量を見守るアヌビスが描かれています。2001年のエジプト切手では「死者の書」において、天秤を扱うアヌビスや、記録を取るトートなど、死者の審判を構成する神々が一堂に表されます。サントメ・プリンシペの切手には、センネジェムの墓に由来する、ミイラを手当てするアヌビスの姿が採用されています。
 Wikimedia Commons

『女神転生』の神獣アヌビス

『女神転生』シリーズでは、アヌビスは主に中盤に登場する「神獣」です。いかにもジャッカルを思わせる黒い犬科の頭と人間の身体を組み合わせた姿は、一目でアヌビスと分かる独特なデザインで、古代エジプトらしい神秘性も備えています。その姿が気に入り、仲魔として連れて歩いた方も多いでしょう。破魔と呪殺という相反する属性の魔法を扱える作品が多く、補助魔法にも恵まれた便利な仲魔です。生と死の境界を守る原典の性格が、光と闇の双方を操る能力として巧みに表現されています。

“Anubis” in Shin Megami Tensei and Egyptian Mythology 

Anubis is the ancient Egyptian god of embalming, burial rites, and the protection of cemeteries. Known as Inpu or Anpu in ancient Egyptian, he was once a major ruler of the realm of the dead. Even after Osiris became the king of the underworld, Anubis retained his essential role as the guardian and guide who safely led the deceased into the afterlife.

In later mythology, Anubis embalmed the dismembered body of Osiris and created the first mummy. This story established him as the divine patron of mummification and funerary priests. Preserving the body was considered a sacred act because it allowed the soul to recognize and reunite with it in the next world.

Anubis also appears in the famous Weighing of the Heart from the Book of the Dead. He adjusts the scales on which the heart of the deceased is weighed against the feather of Maat, the symbol of truth and cosmic order. A just soul is allowed to enter the realm of Osiris, while an unworthy heart is devoured by the monster Ammit. Anubis does not pass judgment himself; he guides the soul and ensures that the weighing is conducted correctly.

He is depicted either as a reclining black canine or as a man with a black canine head. His color represents not only the transformation of the embalmed body but also the fertile black soil of the Nile and the promise of regeneration. Egyptian stamps show several aspects of this god, including the Anubis shrine discovered in Tutankhamun’s tomb, the judgment of the dead, and Anubis tending a mummy.

In the Shin Megami Tensei series, Anubis usually appears as a Divine Beast encountered around the middle of the game. His distinctive canine-headed form makes him immediately recognizable and popular among players. With access to both Light and Dark skills, as well as useful support magic in some titles, he can become a versatile ally. His command of opposing powers reflects his original role as a guardian standing between life and death.

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