🔱神々が集う!切手の中の博物館|インド神話

神話切手コレクション館

🔱神々が集う!切手の中の博物館

 -シヴァ・ドゥルガー・アイヤナール・ブラフマー ――南インドの神々と仏教美術・祭祀・音楽を一枚に収めた贅沢な小型シート-

 2003年インドでチェンナイ政府博物館の創立151周年を記念して切手小型シートが発行されました。
 中央に並ぶのは、シヴァの化身である舞踊神ナテーシャ、赤い円形建築の博物館劇場、古代仏教美術を代表するアマラーヴァティ彫刻。その周囲にはドゥルガー、アイヤナール、ブラフマーの神像をはじめ、古代貨幣、祭祀用具、聖なる太鼓、シタールまで配されています。
 目打ちの内側だけでなく、余白全体が博物館の展示空間としてデザインされているのが、このシート最大の魅力です。ヒンドゥー教と仏教、神話と民間信仰、彫刻と音楽が一枚の上で出会う、南インド文化の小さな「紙上博物館」を巡ってみましょう。
シヴァやドゥルガーなどインドの神々を描いたヒンドゥー神話切手シート|インド(India)2003年

◆インド2003年 チェンナイ政府博物館の創立151周年を記念して発行された小型シート

1.宇宙を踊らせるシヴァと、目打ちの中の三つの名品

 左の5ルピー切手を飾るのは、舞踊するシヴァ神「ナテーシャ(Natesa)」です。シヴァを囲む火焔の円環は、世界が生まれ、滅び、再び生まれる永遠の循環を表しています。画面左の手に持つ小さな太鼓ダマルからは、宇宙を生み出す原初の響きが鳴り渡り、その激しい舞いによって、結い上げた髪が両肩から扇のように広がります。一般的なナタラージャが手にする「破壊の炎」の代わりに、この像が持つのは蛇。死と再生を思わせる蛇を伴い、片膝を高く掲げて踊る姿は、宇宙の力が一瞬の動きに凝縮されたかのようです。「ウールドヴァジャーヌ」と呼ばれるこの珍しい舞踊姿勢は、静かな青銅像の中に、今にも動き出しそうな神秘的な躍動を宿しています。

ナテーシャ(Natesa/Nataraja)として踊るシヴァ(Shiva)を描いたヒンドゥー神話切手|インド(India)2003年
チェンナイ政府博物館劇場(Museum Theatre)を描いた博物館創立151周年記念切手|インド(India)2003年

(切手部分)有名な踊るシヴァの化身「ナタラージャ」
チェンナイ政府博物館の劇場、古代アマラーヴァティの仏教美術

 中央の15ルピー切手は、赤い外壁と列柱が印象的な博物館劇場。左右の宗教美術をつなぐように、シートの中心に置かれています。右の5ルピー切手は、古代アマラーヴァティの仏塔を飾った円形浮彫です。ヒンドゥー教のシヴァから仏教美術へと、博物館の豊かな収蔵世界が3枚の切手に凝縮されています。


2.余白に並ぶ三柱の神々

 シート左端でひときわ大きな存在感を放つのが、多くの腕に武器を携えた女神ドゥルガーです。足元には水牛の姿をした魔王マヒシャを踏みつけています。これは神々から授けられた武器を手に、水牛魔を討つ「マヒシャースラマルディニー」としての姿。穏やかに正面を向く顔と、激しい戦闘を物語る多臂や足元との対照が印象的です。縦長の像をシートの外側に大きく配した構図は、紙上の博物館を守る門神のようにも見えます。

水牛魔マヒシャを踏みつけるドゥルガー(Durga)を描いたヒンドゥー神話切手シート|インド(India)2003年

◆水牛魔を踏みつけるドゥルガー

 ●中央下で象の背に乗る像はアイヤナール
シヴァやヴィシュヌのような全インド的な大神とは異なり、タミル地方の村々で古くから信仰されてきた守護神で、村の境界を災厄や悪霊から守るとされます。テラコッタの馬を奉納する信仰でも知られ、この像では象を乗り物として堂々と進みます。

 ●その右で光背の中で静かに座す創造神ブラフマー
ヴィシュヌ、シヴァとともに三大神を構成し、宇宙と生き物を生み出す役割を担います。戦うドゥルガー、境界を守るアイヤナール、静坐するブラフマー。性格も信仰の広がりも異なる三柱を見比べられることが、このシートの神話的な見どころです。

象に乗る守護神アイヤナール(Ayyanar)を描いた南インド神話切手シート|インド(India)2003年

◆象に乗る村の守護神アイヤナール

創造神ブラフマー(Brahma)を描いたヒンドゥー神話切手シート|インド(India)2003年

◆静かに座す創造神ブラフマー

3.神々を支える歴史・祭祀・音楽

グプタ朝とチョーラ朝の古代貨幣、寺院の祭祀用具(Temple Utensil)を描いた博物館記念切手シート|インド(India)2003年
聖なる太鼓パンチャ・ムカ・ヴァディヤム(Pancha Muka Vadyam)を描いたヒンドゥー文化切手シート|インド(India)2003年

 下部左寄りには、グプタ朝とチョーラ朝の古代貨幣3枚がまとめて置かれ、神像が生み出された時代と王朝の歴史を伝えます。中央の「Temple Utensil」は、小像や動物形の装飾を備えた寺院の祭祀用具。
 右のパンチャ・ムカ・ヴァディヤムは、五つの打面を持つ聖なる太鼓で、シヴァの五つの顔と働きを象徴するとされます。右端のシタールも加わり、信仰が彫刻だけでなく、儀礼や音楽の響きの中にも息づいてきたことを示しています。

一枚の切手シートが、一つの博物館になる

 この小型シートは、個々の名品を紹介するだけでなく、チェンナイ政府博物館そのものを一枚の中に再現しています。中央の切手では、宇宙を踊らせるシヴァ、歴史ある博物館劇場、古代仏教の浮彫が横一列に並び、余白ではドゥルガー、アイヤナール、ブラフマーがそれぞれ異なる神の世界を見せます。

 さらに貨幣、祭祀用具、太鼓、シタールが加わることで、神話が王朝の歴史や人々の祈り、音楽と切り離せないものであることも伝わってきます。切手3枚だけを取り出して見るよりも、周囲の図像を含む完全な小型シートでこそ、発行者の意図と美しさがよく分かります。神々と仏教美術、歴史と芸能を一度に鑑賞できる、まさに手のひらサイズの博物館です。

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